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箱舟はいっぱい
今こそ読んでいただきたいもの
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藤子F不二雄先生の短編集「箱舟はいっぱい」に収録されている
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単行本のタイトルにもなっている作品「箱舟はいっぱい」

あらすじは以下、
今から3年前、カレー彗星(ハレー彗星がモデル)が地球に接近し、3年後である今月末には地球に衝突して人類の終焉が訪れるという騒ぎになった。だが、世界天文文学会議が公式に衝突を否定した事で騒ぎは治まった。しかし、実は公式否定の方が嘘で、各国政府が地球脱出用のジャンボロケットを用意し「ノア機構」に一部の人間だけをロケットに載せるように手配していた事が発覚する。

1974年、今から37年前に描かれた短編読みきり作品ですが、
現在の日本の状況を風刺したのではないか?というほど鋭い内容になっています

色んな立場で色んな見方ができる作品です

地震の問題にも
原発の問題にも
買占めの問題にも



以下、ネタバレのあらすじです

**********************
主人公は小学校低学年の息子と妻の3人暮らしの父親(大山)
長いあいだ借家住まいであったが、
ある日隣人の細川から500万円で土地付きの家を買わないかと提案される

大山は、ようやく夢のマイホームが手に入るとあって歓喜するのだが、
ノア機構を名乗る男が間違って訪問してきてからは何かが引っかかり始める

大山家がTVを見ているとき事件が起こる
歌番組の生放送中、アナウンサーが彗星が地球に衝突し人類は助からないこと
ノア機構という団体が秘密でロケットを作成し、選ばれた一部の国民だけを
救おうとしていること暴露しはじめ、スタッフに取り押さえられたのだ
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大山は隣人細川に「裏切り者」と暴力を振るう

しかし後日TVの報道で、ノア機構が詐欺集団として逮捕されたことを知る
ニュースでは脱出ロケットに載せるということで、
一世帯から100万円~7000万円をだまし取っていたと伝えられた
そもそもジャンボロケットを隠す場所などなく、どこの惑星に移住するのかという
疑問すら答えていない幼稚な詐欺だった

涙しながら安心する大山家


だが、これこそが政府の用意したダミー情報だったのだ
実は秘密裏に作られていたのはロケットではなくシェルターでその収容人員は
日本では無作為に家族単位で選ばれた4万人のみ


まんがの最後で大山家は仲直りした細川家とピクニックに出かける
ちょうどシェルターに脱出するであろう別の近所の家族とすれ違う

「おや、あなたたちもピクニックですか?」
「え、ええ、まあ・・・」
脱出組は後ろめたい気持ちでいっぱい
大山家、細川家は楽しそうに歩いて出かけていく
「なんだか風がでてきましたな・・・」
このあとの終末を暗示するかのように・・・・


**********************

さて、誰が幸せなのでしょうか?
後ろめたい気持ちでもシェルターに逃げられる家族なのか?
(シェルターに逃げられたとしてもその後の世界で生きていけるのか?)
何も知らないまま大災害にあうであろう大山家なのか?

これを読んだときの年齢や、立場や、状況で大きく感想も違うでしょう
F先生はラストで何も語っていません

ぼくは初めて読んだ中学生のときと20代の頃と今とで全然思いが違いました
歳を重ねるごと、立場が変わるごとに重みを増していく感じです


是非、一読をオススメします
*他のSF短編も素晴らしい作品がいっぱいです
どれも世界を人生を考えさせられるような内容
もっともっとたくさんの人に知ってもらいたいです
by takai4114 | 2011-03-29 19:44 | その他色々
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